願い婚~幸せであるように~
覚えていないのではなく、思い出さないように蓋をして、しっかりと鍵をかけた……。鍵をかけるきっかけになった何かがあったのかもしれない。


「一度、和花のお母さんと話をした方がいいかかもね。園本先生、和花に気付いたようだから、会おうとするかもしれないし」

「うん……。お母さんに電話してみようかな」


もし父に訪ねてこられたら、困る。それよりも先に知らなくてもいいと思っていたことを知らなくてはいけない。

会ってしまったから、これ以上避けられない。


『そう、あの人に会ったのね。いつか話さなくてはいけないかなと思ってはいたけど、知って苦しむようになるなら、話さない方がいいかなと思ってしまってね』

「私、今でも誰かに捕まる怖い夢を見るの。その原因がお父さんなら……」

『うん、原因はお父さんよ。今でも見るなんて、かわいそうに……』

「真実を知れば、嫌な夢から解放されるかもしれない。だから、教えて」


電話で話すよりちゃんと顔を見て話したいと母が言うから、急ではあるけど、翌日幸樹さんと共に実家に帰ることにした。

しかし、実家に帰る必要がなくなってしまった。敵は行動が早いのか……。私たちが帰宅してから一時間後に父がやって来た。

茅島社長に頼み込んで、私たちの住む場所を教えてもらったそうだ。
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