願い婚~幸せであるように~
「私には会いたくないと? どうして、いつも拒む? 」


怒気を含んだ声に私の肩は震えた。幸樹さんが私の手を握るが、震えは止まらない。怖い、怖い……。早くこの人から離れたい。


「拒まれる理由はご自身がよくご存知なのではないでしょうか? 本当に失礼します。すみません、これ俺たちの分です。和花、行こう」


幸樹さんに抱きかかえられて、カフェを出た。頼んだコーヒーには私も幸樹さんも口をつけていない。飲む余裕などなかった。

彼はマンションのエレベーターに乗ると、私を抱き締めた。


「ごめん。カフェなんて行かないで、ちゃんと断ればよかった」

「ううん、幸樹さんは悪くない……」


幸樹さんは断ってくれていた。だけど、父がどうしても会わせてほしいと懇願したから、仕方なく外に出た。

嫌なら嫌だと私がハッキリと断るべきだった。もう過去に何があったか知るのも嫌になる。知ってもいいことはきっとない。

だから、母にやっぱり行かないと断りの電話を入れた。幸樹さんは私がそうしたいなら、知ることはやめようと言ってくれた。

なんの解決にもならないけど、今の私には無理だった。


「幸樹さん、私から離れないで」

彼にしがみついた。
< 116 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop