願い婚~幸せであるように~
「離れたいといっても、絶対離さないから」


ふわっと優しく抱き締めてくれた彼の胸に顔を埋めた。

それから、私は夜ベッドに入るまで幸樹さんにくっついていた。小さい子供が親から離れないのと同じで、トイレ以外は離れなかった。

彼を見失ったら、行き場をなくしてしまいそうで不安になった。だから、鬱陶しいくらいくっついていた。


「まさかお風呂一緒に入ってくれるとはね」


私を見下ろす彼が笑う。恥ずかしさに顔は赤くなる。そう、トイレ以外離れなかった私は、お風呂までついていった。

さすがにビックリしていたけど、「大歓迎」と喜ばれてしまった。シャンプーする幸樹さんの手は優しくて、気持ちよかった。私もお返しに洗ってあげた。

思い出すと恥ずかしいことばかりだけど、楽しくて心は幸樹さんでいっぱいになった。彼のことしか見えなく、彼のことしか考えられない。

今も熱く見つめる瞳にとらわれたかのように、私も見つめ返す。私の頬を包む手はあたたかくて、安心感を与えてくれる。

目を閉じれば、濃厚なキスをされて幸せな気分へと導いてくれる。たっぷり時間をかけて、優しく抱いてくれた。

私の不安を取り除くかのように。
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