願い婚~幸せであるように~
気持ちの良い朝を過ごせるのも幸樹さんが笑ってくれるからだ。幸樹さんの家族は、彼はあまり笑わないと言っていたけど、よく笑っているから不思議になる。

後片付けも幸樹さんが率先してやってくれた。平日は私に任せきりで申し訳ないから、出来る日はやらせてと言う。

一人暮らしをしていたから、家事を負担に感じてはいないし、食洗機があるからむしろ楽をさせてもらっている。私よりも仕事が忙しいのだから、休日は体を休めてほしい。

そう願うのに、彼の優しさがうれしくて甘えてしまう。今日もまだ離れられない私は、乾燥機から取り出した服を幸樹さんと一緒に畳む。


「ふたりでやると早く終わるね」

「うん、ありがとう」

「いや、お礼を言うのは俺の方だよ。今日は俺がなんでもやろうと思っていたのに、ありがとう」

「だって、一緒にやるのが楽しい」


畳み終えたタオルや服を前にして、彼の肩に寄りかかる。ふたりで過ごせる時間に心が休まる。


「アップルパイ作ろうかな」

「おっ、いいね。俺も一緒に作りたいな」

「うん、一緒に作ろう」


マンションを出て、青い空の中に浮かぶ肉まん型の雲を見つけ、笑いながら手を繋ぐ。リンゴを買うためにスーパーへと向かった。
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