願い婚~幸せであるように~
出勤時間を過ぎた午前中のホームは、それほど人が多くない。電車が到着するというアナウンスが流れた時、ジャケットのポケットの中でスマホが鳴動した。

画面には『お義父さん』と表示された。並んでいた列から外れて、スマホを耳に当てた。次の電車に乗ろう。


「はい、和花です」

『仕事中に悪いね。明後日の夜、空いているかな?』

「特に予定はありませんが」

「じゃあ、幸樹も含めて四人で食事をしよう。幸樹には私から連絡しておくね』

「はい、よろしくお願いします」


突然のお誘いではあったが、幸樹さんの両親とたまには食事をするのもいいかも。すみれから無事退院したと昨日の午前中に連絡があった。

四人でということは、すみれは来ないのかな。すみれはなにか用事があるのかもしれない。


しかし、私は四人を勘違いしていた。私だけでなく、幸樹さんも。

二日後の夜、幸樹さんと指定された場所に行く。結婚前に幸樹さんと母が顔を合わせた料亭だった。

幸樹さんから、家族でよく利用していると聞いている。料亭からしたら、上得意様になるのだろう。今日も女将さんが出迎えてくれて、個室まで案内してくれた。

ドアを開けたら、幸樹さんの両親が並んで座っていると思ったのに……幸樹さんと揃って、絶句する。
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