願い婚~幸せであるように~
幸樹さんは原因を知れるなら、知ったほうがいいと考えているだろう。知ったら苦しくなるかもしれないが、わだかまりが消えるかもしれない。

でも、やっぱり怖い……。

短い時間に私はいろんな気持ちと葛藤して、幸樹さんを見た。彼は心配そうにしながらも優しい瞳で私を見ている。ひとりではない、幸樹さんがいてくれる。

今一番信頼出来る旦那さんだ。


「聞きます」

「うん。園本さん、お話ください。あちらに座り直しまょう」


出入口のドアの前に膝をついていた父は、立ち上がってズボンに付いたホコリを払った。テーブルを挟んで、私たちは対面する。

こちらから声を掛けるまで料理は運ばないようにと女将さんに頼んだ。緑茶とおしぼりだけが、それぞれの前に置かれている。父は緑茶をひと口飲んでから、口を開いた。

父がこちらに顔を向けると、私は逸らした。目を合わせるのはまだ苦手だ。


「まずは和花の母親と離婚することになった原因から話そう。和花は聞いている?」

「いえ、聞いたことありません」

「そうか……。私の不貞行為が原因だ」


不貞行為……つまり、父は妻がいながらも他の女と体の関係を持った……。
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