願い婚~幸せであるように~
「平原さーん、ちょっと来てー」


翌日、なんの支障も感じることなく業務をしていると、榊社長が浮かれた声で私を呼ぶ。「はい」と返事をしながら、何事だろうと首を傾げた。用件が思い浮かばない。

ミーティングルームに行くと、課長もいた。さっき昼休憩を終えて、外出しようとフロアを出たら捕まったそうだ。

いつもかなりの余裕を持って、出掛ける人だから、少々の時間なら問題なさそうだけど、今呼び止めるほどの話とはなんだろうか。


「突然呼んで悪かったけど、いい知らせだからすぐ教えたくなってね」

「いい知らせですか?」

「そう。カヤシマ不動産の茅島部長からさっき連絡があってね」

「はあ……」


幸樹さんから榊社長へ連絡? なんの連絡か想像つかなくて、気の抜けた返事をする。


「あ、もしかして!」


なにか閃いたらしい課長がポンと手を叩く。なにも閃かない私は、社長の答えを待った。勿体ぶらないでさっさと話していただきたい。


「おっ、さすが察しがいいねー。おめでとう!」

「ありがとうございます! 平原さん、良かったね!

「はい?」


いまだにひとり状況が飲み込めない私はキョトンとした。何がおめでとう?

どんなおめでたいことがあったの?
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