願い婚~幸せであるように~
「ありがとうございます。他の社のも良かったので、正直期待していなく……とてもうれしいです。でも、実は加藤さんに聞くよりも先に榊社長から聞いていました」

『は? 言わないでと口止めしたのに、あの人は口が軽いな』


榊社長、ごめんなさい……幸樹さんに隠し事はできません。心の中で謝る。口が軽いのは私もだろうけど。

榊社長を責めるような口調ではあるが、本気で怒ってはいないのは分かる。それでも私はおそるおそる声を出す。


「あの、幸樹さん」

『ん? もしかして、怖がらせちゃった?』

「あ、うん。不機嫌そうな幸樹さんは何度か見たことあるけど……別に怖くはないよ」


私の代わりに、父と話す幸樹さんの口調は冷たかった。私のために怒ってくれているのは分かってはいたが、同じように自分が言われたら怯んでしまうだろうなと感じた。

でも、怖くはない。彼が怒るのにはちゃんと納得出来る理由があるから。


『和花。今日は早く終わらせるようにするね』

「でも、遅くなるって言ってたよね? お仕事、大丈夫?」

『うん。俺がいなくても成り立つように今調整してる。絶対終わらせるようにするから、夜は一緒に食べよう』

「うん、ありがとう」
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