願い婚~幸せであるように~
幸樹さんからの思いがけないお誘いのおかげで、その後退社するまでの業務は捗った。

夕方、幸樹さんからURL付きのメッセージが届く。レストランを予約したらしく、ここで待ち合わせと。

こんな服装でいいのかな?と薄ピンク色のブラウスに黒色のウエストリボン付きのタイトスカート姿をざっとトイレの鏡で見てから、グレーのコートを羽織った。地味に見えるが、帰って着替える時間はない。

会社からそのまま指定されたレストランに行く。幸樹さんもちょうど到着したばかりのようで、出入り口で彼の後ろ姿を見て、思わず駆け寄った。

私のヒールの音が聞こえたからなのか、幸樹さんが振り返った。


「和花、お疲れ様」

「幸樹さんもお疲れ様」


目を細めた彼は私の手を握って、スタッフに名前を告げた。

ライトアップされたレインボーブリッジを含むきらびやかな夜景が見渡せる席に案内されて、まず感嘆な声をあげる。


「わぁ、きれい! 素敵」

「うん。空気が澄んでいるから、よりきれいに見えるね」


乾杯のシャンパンが注がれて、グラスを持つ。


「改めて、おめでとう」

「ありがとう」


前菜のテリーヌからメインの牛フィレ肉までをしっかりと味わった後、デザートのチョコムースとコーヒーがそれぞれの前に置かれる。
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