願い婚~幸せであるように~
「もしかして、これから食べるご飯のお金?」

「はい。お恥ずかしながら、手持ちが少ないことに今気付いたので」

「大丈夫。今日は私が誘ったから気にしないで。ね、時間になるから行こう」


茅島さんに背中を押されてしまい、そのままレストランへ行くことになった。


「コースも私が勝手に予約してしまったけど、食べられない物ある?」

「特に苦手な物はないので、なんでも食べられます。ありがとうございます」


茅島さんはここのレストランに何回も来たことがある様子だった。彼女がシャンパンの入ったグラスを手にしたので、私も同じように持つ。


「まずは再会を記念して、乾杯しましょう」

「あ、はい」


茅島さんは再会を喜んでくれているが、彼女のことを全然思い出せない身としては、少々心苦しさがある。


来てよかったのかと思う気持ちは昨夜からあるが、とりあえず前菜から食べ始めた。姿勢よくして、食べる茅島さんをそっと窺い見る。


「あの、茅島さん」

「ねえ、和花ちゃん。私の名前はすみれというの。昔は和花ちゃんはすみれちゃんって呼んでくれていたから、同じように呼んでもらえる? それからもっと気楽に話そう」

「でも、思い出せていないのでなんだか不思議な感じというか……」
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