願い婚~幸せであるように~
やっと聞けた感想に肩の力が抜ける。良かった……勧めたからには美味しいと言ってもらわないと意味がない。

幸樹さんはパイやタルトのようなサクッとしたのが好みだから、もしかしたらムースは苦手かもと思ったけど、良かった。


「でしょ? 濃厚だけど、ビターなのがアクセントになっていて美味しいよね。口の中ですぐとける食感も最高」

「和花は食レポがうまいね。和花に言われると何でも美味しそうに思えてくる」

「えっ、ただ食いしん坊なだけです……」

「かわいい食いしん坊さんだ。何度も美味しいものを食べさせたくなるね」


かわいい食いしん坊さん?

食いしん坊にかわいいはいないような?

幸樹さんから出てくる私に対しての言葉はなぜかいつも甘くなっている。彼はどれだけ私を恥ずかしくさせるのだろう。


「私、そんなにかわいくないよ?」

「なに言ってるの? 俺にとって、最高にかわいい奥様だよ」


頭から火が出る勢いで、私の顔は一気に熱を帯びた。多分真っ赤だろう。鏡で見て確認はしていないけど、さっきまではほんのり赤い程度だったはず。

私と幸樹さんの会話に聞き耳を立てていたらしい隣のテーブルにいた年配の女性が「若いくて、いいわねー」とご主人らしき男性に話しているのが聞こえた。

他人に聞かれたなんて、恥ずかしいけど、幸樹さんの言葉はうれしかった。
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