願い婚～幸せであるように～
加藤さんは肩をすくめたが、反省しているようには見えなかった。そんなふたりのおもしろいながらも微笑ましくも見えるやり取りを課長と笑う。

これからお互い強力しあつて、進めていくプロジェクトだから和気あいあいとした関係を作るのも大事だ。

しかし、加藤さんのお喋りは止まらない。男性でもよく喋る人だなとつくづく思う。


「それにしても、女性には興味ありませんという顔で仕事ばかりしていたのに、突然結婚するんですから、ビッケリでしたよ」

「それを言うなら、うちの平原さんもですよ。全然男っけがなかったのに、いきなり人妻になるんだから」

「いやー、人妻って、いい響きですねー」

「しかも新妻ですよー。きっと家ではラブラブなんでしょうね」


加藤さんの話に課長がのって、ふたりでわいわいと楽しみだした。まさか本人たちを前にして、話題にするとは……。恥ずかしい。

幸樹さんを見ると、彼はこめかみ辺りをピクピクさせていた。悪いことを言われているのではないが、少々無遠慮なのがよくない。


「おい、加藤。いい加減にしろ」

「はい、すみません……」


不機嫌な声の幸樹さんにじろりと睨まれた加藤さんは、さっきよりも大きく肩をすくめた。そこからは静かになり、今後スケジュールに話を戻す。
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