願い婚~幸せであるように~
それでもムードメーカーな加藤さんのおかげで、一応楽しく打ち合わせは進んだ。マンションの完成は来年の秋を予定していて、来年になったら入居者の募集の開始する予定となっている。

完成予定図としてのイラストをこれから作成する。こういったイラストを描くのを誰よりも得意とするのは当社の榊社長だ。

幸樹さんもそれを知っていて、ぜひ榊社長に描いてもらいたく、先日本人へ直談判したそうだ。

スケジュールを確認した上で返事をすると偉そうに言っていたが、引き受けてくれると確信は持っているという。

そうか、榊社長は偉そうにしていたのか。イラストを描くのは好きだが、なかなか仕事上では機会がないと以前ぼやいていたなら、きっと内心は大喜びしているに違いない。

保留にしないで、すぐ返事をしたらいいのにと思うが。

打ち合わせを終えて、帰ろうと腰をあげた時、幸樹さんに腕を引っ張られる。何事かと思う間もなく、会議室の隅に連れていかれる。

加藤さんと課長はその様子をポカンと見ていたが、気を利かせてくれて、そそくさと先に退室した。


「和花。悪いけど、急用が出来て今夜は家で食べれなくなった」

「うん、分かった」

「出来るだけ早くに帰るようにするからね」

「うん、お仕事がんばってね」
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