願い婚~幸せであるように~
幸樹さんを見上げて微笑むと、彼は顔を近付けてキスを落とした。それも唇に……。


「もう、幸樹さん! ここ、会社だから」


唇を押さえて、思わず誰かに見られていないかとキョロキョロする私を幸樹さんは笑う。笑い事じゃないのに……分かってない顔だ。


「別にいいじゃないか。俺たち結婚しているんだから」

「結婚しているからとどこでもしていいものじゃないでしょ。誰かに見られたら恥ずかしいし」

「なるほど。ようするに誰にも観られなければ何をしてもいいんだよね。今はドアもちゃんと閉まっているから大丈夫だよ。もう一回させて」


なんという理屈かと目をまるくさせて、彼を見つめるとまた唇が重なった。今度はさっきのよりも濃厚で……。

「んっ、ダメだって……ば……」


離れてもらいたく彼の胸を押すけど、離れてくれない。必死で抵抗するものの、息が乱れてしまう。

やっと離れた幸樹さんを見つめるが、脳内はぼんやりしていた。濃厚なキスをするから……いけない。


「そんなとろんとした目で見られると、堪らなくなる」


彼はもう一度触れるだけのキスをして、私の頭を軽く叩き、楽しそうに笑った。
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