願い婚~幸せであるように~
「出ようか。いつまでもここにいたら、さすがに怪しまれる」

「そ、そうです。早く出ましょう」


我に返った私は早く出ようと幸樹さんの腕を引っ張ったが、彼の体はびくともしない。どうして動かないの?

今出ようと行ったのに、なぜ?

動かない幸樹さんをじっと見つめる。


「幸樹さん?」

「ん? ああ、ごめんごめん。行こう」


一個幸樹さんの意識はどこに行ったのだろう? 何を考えていた?

仕事に関係のないことのように思える。なにかは全然分からないけれど。

課長は先に帰ってしまったので、私は幸樹さんに見送られてエレベーターに乗った。

一階に降りて、受付の前を通りかかると「和花、待って」と今度はすみれに呼び止められる。なかなか会社に戻れないと苦笑してしまう。

すみれも幸樹さんと同じように隅へ私を連れていった。


「今夜、予定ある?」

「ないけど。幸樹さんは急用が出来たといって、ご飯いらないと言われたから」

「急用か……。じゃあ、私に付き合ってよ。一緒にご飯食べよう」

「うん、いいよ」


一瞬すみれの表情が曇ったように見えたが、気のせいだったかな。夕方までに場所と時間を連絡するというので、すみれにお任せした。
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