願い婚~幸せであるように~
すみれが選んでくれたお店は意外にも居酒屋だった。茅島家のお嬢様には似つかわしくないように思えたが、ここを選んだ理由をのちほど知ることとなる。

店内がそれほど混雑していないこともあり、私たちは四人用のテーブル席に案内される。すみれは椅子に座らず、まず店内を見回していた。


「まだ来てないわね」

「えっ? 誰か来るの? 誰を探しているの?」

「この席だと目立つからあっちの席に変えてもらいましょう」


返事にならない答えとよく分からない提案で、おしぼりを持ってきたスタッフに断って、端ではあるが、店内を見渡せる席に移動した。

誰かが来るみたいな言い方だったから、その人を見張るのかな。誰だろう? もしかして、すみれの好きな人とか……。

付き合っている人はいないけど、好きな人はいるのかもしれない。


「居酒屋に入るのは学生の時以来なんだけど、メニューがいろいろあって楽しいよね」

「うん、そうだね。ねえ、今好きな人いるの?」

「随分唐突な質問ね。いないわよ」

「あ……、そうなのね」


思い違いだったことに恥ずかしくなり、メニューを開いた。お互いに食べたいものをいくつかオーダーする
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