願い婚~幸せであるように~
「なるほどー。幸樹さんらしいね」

「一応将来的な立場を意識してのことらしいけど……あ! 来た……」


『あ!』は比較的大きめな声だったのに、続く『来た』は小声になったから、気になってすみれ視線を辿った。辿り着いた先には……。

えっ?

とうして?

カウンター席に案内されて座る男女ふたり。女性は今日受付で見た小橋さんで、男性は私の夫である幸樹さん。

急用が出来たと言っていたが、その用は小橋さんと食事をすることなの?

仕事関係の急用で、取引先との会合かと思っていた。居酒屋だから特別な場所という感じはないけれど、仕事を終えたあとで会う理由はなんだろう?

不安が一気に込み上げてるが、自分がここにいることを知られないようにと身を屈めた。すみれはひっそりと二人の様子を窺っていた。


「ここに来るの、知っていたの?」

「うん。お兄ちゃんに教えてもらった。あの人と今夜会うと約束していたのが聞こえたから、どこに行くのか聞いたら、すんなり教えてくれたわ。きっとやましいことではないからと教えてくれたと思うけど、和花は知っていた?」

私は首を横に振る。

「急用が出来たとしか言われていない。どんな用か聞けば良かったのかな……」


幸樹さんを信用しているからあれこれ詮索しないようにしていたが、もっと聞くべきだったのかな。
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