願い婚~幸せであるように~
幼い頃の願い
「お邪魔します……」


おそるおそる用意された白いふかふかのスリッパに足を入れて、すみれちゃんのあとを追う。

車一台通れるのではないかというくらい幅広い廊下を進んでいった先の左側に、両開きのドアがあった。

ドアは開かれていたので、そのまま足を進める。

パーティールームかと思われるくらいのとても広いリビングルームには、応接セット、ダイニングテーブル、テレビ、キャビネット等が置かれていた。

大人数で座れるダイニングテーブルには白いテーブルクロスがかけられていて、カトラリーだけが用意されている。

応接セットのソファーにひとりの女性が座っていた。その人は私たちの気配に気付いて、こちらへと振り向く。


「お母さん。こちら、和花ちゃん」

「まあ、久しぶりね! 和花ちゃん、きれいになったわねー」

「えっ、あ、あの……今日はありがとうございます」


やはりすみれちゃんのお母さんの顔も初めて見る顔で、どう返していいか戸惑った。昔会ったことあるのだろうけど、嘘でも久しぶりとは返せなかった。

すみれちゃんのお母さんはとてもきれいな方で、成人したお子さんがいるようには見えないくらい若々しい。

すみれちゃんとよく似た笑顔を向けられる。
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