願い婚~幸せであるように~
「こうくんのおよめさん?」

「そう! 和花ちゃんの夢もみんなと違って、目立っているでしょ?」


私は返事をしないで、『こうくんのおよめさん』という文字をじっと見た。

誰だろう?こうくんって……この頃に好きだった男の子?

これを書いたことの記憶がないから、こうくんの記憶もない。でも、記憶力がいいというすみれちゃんなら知っているかも。


「このこうくんって、どの子?」

「ふふっ、それはねー」


すみれちゃんが意味深に笑って、答えを言おうと口を開きかけたとき、ドアがノックされる。突然響いた音に、私たちは顔を見合わせた。

なんというタイミングだろう。良いのか悪いのか。用意が出来たからとすみれちゃんのお母さんが呼びに来たのかな?

「はーい」とすみれちゃんが返事をすると、ドアが開いて、予想していない人が顔を見せる。

薄グレー色のシャツにボルドー色のネクタイ、黒のチノパンを身に付けたその人は、本日の主役だ。


「お兄ちゃん! 帰ってきたの?」

「そろそろ始めるって。和花ちゃん……いや、あー、えっと、平原さん。今日はわざわざ来てくれてありがとう」

「お兄ちゃん、言い直さなくてもよくない? 和花ちゃんって、呼んでいたんだし。ね、和花ちゃんでいいよね?」
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