願い婚~幸せであるように~
すみれちゃんにいいよね?と訊かれても、返事に困る。昔は名前で呼んでくれていたのかもしれないけど、面と向かって呼ばれるのは恥ずかしい。


「すみれが決めることじゃないだろ? 平原さん、困っているじゃないか」

「あ、いえ。あの、すみません」

「謝らないで。それより下に行こう」

「うん。行こう、行こう!」


茅島部長に咎められても、気にすることなく、すみれちゃんは元気よく我先にと歩いていった。

そのあとを残されたふたりで歩く


「今日は、すみれが無理やり誘ってごめん」

「いえ、私なんかが祝っていいのかなと思ったのですが、図々しくお邪魔してしまって……」

「いや、そんな図々しくなんてないよ。来てくれて、うれしいから」

「えっ?」


今うれしいと言った?

歩きながらの話だったから、どんな表情で言っていたのかは分からないけど、まさか本当にうれしいと?

思わず、足を止めて彼を見る。止まった私に合わせて、彼も止まる。


「どうしたの?」

「そういえば、すみれちゃんが私と会えてうれしいと部長も言っていたと……」

「うん、君のことはずっと気になっていたから、元気にしていたようでうれしかった」
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