願い婚~幸せであるように~
見た目もきれいに出来ているし、味にも一応自信がある。でも、受け入れてもらえるかの自信はほぼない。

アップルパイを見た部長は「おっ」とひと声発する。


「まあ! 美味しそうなアップルパイね。和花ちゃんが作ったの?」

「えっ、作ったの?」


すみれちゃんのお母さんの質問で、部長が驚いた顔で私に同じことを訊ねる。


「はい。パイが好きだと教えてもらったので、作りました。あの、無理には……」

「ありがとう!」

「えっ? あ、はい。食べてくださいね」


満面な笑顔でお礼を言われ、目を瞬かせてしまったが、喜んでくれたようでうれしくなる。


「では、こちらのタルトと一緒に切り分けて来ますね」


早津さんがタルトとアップルパイをワゴンに乗せて、キッチンへと行こうとする。


「早津さん、待って。切り分けるって?」

「はい? 五等分にいたしますが?」

「パイはダメだよ。俺がもらったんだから」


部長はパイをひょいと取り上げて、自分の席に持っていく。

まさかのひとり占め? 確かに部長のためにと作ったけれど……。


「ちょっと、お兄ちゃん。私たちもそのアップルパイ、食べたいんだけど」


すみれちゃんの言葉にご両親も頷くが、部長は低い声で「は?」と訊く。
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