願い婚~幸せであるように~
不穏な空気になりそうな予感がして、私は口を挟んだ。


「あの、皆さんで食べてください。もし、お口に合ったなら、また作りますから」

「ほら、和花ちゃんもみんなで食べてと言ってるわよ。みんなで食べましょう」

「本当にまた作ってくれる?」

「はい、いつでも作ります」

「それなら、これはみんなで食べる。早津さん、よろしく」


部長がワゴンに戻すと、早津さんは安心した表情で運んでいった。私は手伝おうと、早津さんに続いて、キッチンに入る。


「お手伝いさせてください」

「和花さんはタルトやパイを切るの得意ですか?」

「得意というほどではないですが、普通に切れます」

「こういうのは上手に切らないと崩れるので、切ってもらってもいいでしょうか? よろしくお願いしますね」


お皿を用意するのを手伝おうと思っていたから、予想外のカット係りに任命されて緊張する。

渡されたナイフを熱湯で温めて、まずはタルトから切っていく。まっすぐと上から下へと落として、底の生地にグッと力を入れる。

これを繰り返して、なんとか五等分することに成功。

早津さんは素早くタルトをリビングへと運ぶ。その間には私はアップルパイのカットに取り掛かった。
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