願い婚~幸せであるように~
こちらちも同じようにナイフを温めてから、立てて少しずつ切っていく。崩れないようにとゆっくりと下へ動かし、五等分にした。

しかし、考えたら私の分はいらなかった。早津さんに食べてもらおうとしたが、断られてしまう。

アップルパイを運ぶのは、私が引き受けて、まず部長のところにふたつ置いた。


「ふたつ?」

「はい。私の分ですが、どうぞ。実は昨日、練習用に作って食べたばかりなんですよ。なので、やはり部長に多く食べてほしいので、よかったら、食べてください」


何度か作ったことはあったが、しばらく作っていなかったので、練習用に作って、淳平と食べた。

「とても美味しい」と淳平が言ってくれたので、自信をもって作ることが出来た。


「ありがとう。でも、一度に食べてしまうのはもったいないから、ひとつは夜に食べるね」


部長は優しく微笑んで、早津さんに保管をお願いした。

そして、みんなで食べるときになり、私はじっと部長を動きを見た。彼はまずアップルパイから食べる。

ひと口食べて、私を見る。


「うん、美味しい。今まで食べたどのパイよりも美味しい」

「ありがとうございます。でも、褒めすぎです」
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