願い婚~幸せであるように~
しどろもどろになりながら混乱していることを伝えていると、核心をつかれて、頷く。

そう、昔のことを覚えていないから、今の私からしたら、ほとんど知らない人にプロポーズされたようなものだ。

カヤシマ不動産の部長という誰もが知る一般的な肩書きしか知らない。


「結婚してから、知ってくれたらいい。俺も今の和花ちゃんを知らないから、知りたい。お互いを知るために、結婚から始めないか?」

「お互いを知るために?」

「ねえ、和花ちゃん。お兄ちゃんはちょっと無茶なことを言ってるけど、真剣だから信じてあげて。それに、絶対優しくしてくれるから」


真剣に言ってくれているのは、伝わっている。優しい人だとも思う。それに、かなりのイケメンで次期社長だから、誰もが羨む人だ。

こんな素敵な人からプロポーズされて、普通の人なら断らないかもしれない。


「あ、和花ちゃん、もしかして付き合っている人とか好きな人がいる?」


黙る私にすみれちゃんが訊く。だけど、残念ながらそんな相手はいない。「いない」と答えると、すみれちゃんは安心した表情を見せた。

幸樹さんが私の手を握る。大きくて、温かい手だ。
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