願い婚~幸せであるように~
午後二時との待ち合わせ時間しか決めていなく、何時に帰るのか分からない。マンションだけ見るなら、夕方五時には帰れるだろうけど……。


「何時になるか分からないから、明日もらってもいい?」

「いいけど。誰とどこに行くの?」

「えっと……。淳平、あのね、実は……」


まだ結婚することを話していないから、今話そうとするが、その時一台の車が路肩に止まった。

助手席の窓が開いて「和花ちゃん」と呼ばれる。呼んだのはもちろん待ち人である茅島部長。


「今、行きます! ごめん、淳平。あとでゆっくり話すね」

「待って。あの人、誰?」

「えっと、茅島幸樹さん」

「付き合っているの?」

「うん、まあ、そう。ごめん! 本当にあとで話すから」


両手を顔の前で合わせて、再度謝ってから、部長の待つ車に行った。ずっとこちらを見ている淳平の目が気になったけど、今はのんびり説明していられない。


「こんにちは」

「どうぞ、乗って」

「はい、ありがとうございます」

「あの彼は誰?」


助手席に座る私からマンションのほうに動かした部長の視線に、つられて私も同じ方向を見る。そこにはまだこちらを見ている淳平がいた。
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