願い婚~幸せであるように~
えっ……言ってと言われましても……。

はいと声に出して返すのも恥ずかしくて、頷くことしか出来なかった。


「じゃ、おやすみ」

「おやすみなさい」


幸樹さんは私の頬にキスをしてから、再び目を閉じた。繋いだ手の温もりから、心が落ち着いてきて、私も自然にまぶたが降りてきた。

結婚して初めての夜は穏やかに過ぎていく。幸樹さんの優しさを感じた夜となった。


結婚生活が始まって、三日目の朝。

長方形の弁当箱にご飯とおかずを詰めていると、幸樹さんが起きてきた。後ろ髪がはねている姿に顔が緩む。


「おはようございます」

「おはよう。お弁当?」

「はい、今日は外出予定がないので」

「いいな、美味しそう」


私は、週の半分くらいお弁当持参している。幸樹さんは急の外出も多いらしく、ほぼ外食だと言っていた。

彼は残っていた玉子焼きをつまんでから、洗面所へと行く。外での姿しか見たことがなかったから、一緒に暮らしてみるといろいろ新鮮だ。

きっちりしているイメージだったけど、意外に無頓着な部分もある。まだ結婚してから数日だが、いろんな顔が見れて楽しい。


「和花の帰りは何時くらい?」

「今日は月末の事務処理があるので、少し残業して……七時くらいになるかなと。幸樹さんの予定は?」
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