願い婚~幸せであるように~
手渡された紙袋を受け取ってから、部屋に行こうと促したが、淳平は動こうとしない。なにかを考えているのか、目線は空に向いていた。

「淳平?」と呼ぶとハッとした顔をする。


「えっとさ……旦那さんはいるの?」

「ううん、まだ帰っていない。淳平、夕飯食べた? まだなら一緒に食べようよ」

「いや。旦那さんいないのにあがるのは、よくないだろ?」

「そう? 幸樹さんは気にしないと思うけど。じゃあ、外で食べる? 駅の近くにいろいろあるから、行こう」


淳平とは時間が合えば、よく一緒に食べていた。従兄だから気のおけない家族だという認識でいた。

だけど、私だけが思っていたようだった。

駅に向かう途中、焼き鳥の香ばしい匂いがしてきて、私たちの意見は一致した。匂いに誘われて、鼻を動かしながら辿り着いた場所は、大通りから脇に入ったところにあって、赤いのれんがいかにも焼き鳥屋さんだった。

空いていたカウンター席に並んで座って、食べたいものをオーダーする。

ビールを頼んだ淳平は、私がウーロン茶を頼んだからビックリしていた。


「飲まないの?」

「うん。幸樹さんが帰ってきて、酒臭いとは言われなくないから」

「へー、そんな気遣いするんだ?」

「まだ結婚したばかりだし、嫌われたくないからね」
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