願い婚~幸せであるように~
「あらためて、おかえりなさい」

「うん、ただいま」

「それ、お水?」

「うん。のんびり出てきたらいいのに。まだ髪濡れている」


幸樹さんは立ち上がって、私の肩に乗せていたタオルを手に取って、拭き始めた。髪の毛はあとで乾かすつもりだった。


「あの、幸樹さん、自分で乾かすから大丈夫です」

「あ、そうだよね。和花、今夜何食べたの?」


そうだよねと言いながらもまだタオルで私の髪を撫でていた。幸樹さんもどこかのお店で食べてきたのだろう。微かに油っぽい匂いがする。


「えっと、焼き鳥屋さんで食べました」

「焼き鳥? ひとりで?」

「いえ。淳平が母から預かったものを持ってきてくれたので、一緒に食べました」

「あー、来たんだね。もしかして、飲んだ?」

「えっ? いえ、私はウーロン茶を飲みました」


淳平の名前を出した途端、動きを止めるから一瞬何を聞かれたのか分からなくなった。幸樹さんは表情をなくして私を見た。

もしかして、幸樹さんも焼き鳥が食べたかったのだろうか。


「幸樹さんも焼き鳥好きですか? 歩いて行けるところにあって、お持ち帰りも出来るので今度買ってきましょうか?」
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