願い婚~幸せであるように~
ふたりの視線の先にいるのは、幸樹さんだった。彼は森村さんと話をしている。


「さすが茅島部長の奥様だなと思いましたよ」

「うんうん」


加藤さんの言葉に川中さんが相づちを打つ。幸樹さんの奥様だから?

まさかそんなところから評価を得るとは……なんだか恥ずかしい。


「和花、お疲れ。真っ直ぐ会社に戻るの?」

「はい」

「おおー。夫婦っぽい会話ですね」

「加藤……。そういう言い方されると恥ずかしくなるから、やめてくれないか」

「おおー。部長でも恥ずかしくなるんですね」

「いや。俺じゃなくて、和花が……」


確かに幸樹さんは恥ずかしそうにしていなく、堂々としている。今、顔を赤らめているのは私だ。加藤さんが私を見て、クスクス笑う。


「先ほどプレゼンしていた平原さんとは別人みたいですね。赤くなるなんて、かわいらしいですね」

「加藤がかわいいとか言わなくていいから」

「あれ? 意外に独占欲高めなんですね。いやー、部長の意外な一面が見られて、うれしいですよ」

「加藤、いちいちうるさい……。じゃ、和花。気をつけて帰って。川中さんもお疲れ様でした」


腕時計で時間を確認した幸樹さんは早歩きで離れていく。この後、予定があるのだろう。
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