光ヘ
『…こっち向いてみて』
彼は笑いながらいう。

顔を洗ったばかり…

見られたくないし…


…どうせ見て笑うんだろう。


あたしは無視した。


『聞いてんの?』


彼は尚も続ける。

あたしはとにかく洗ってこの場から去りたかった。


『おい』


グイッ…


あたしの肩を持った彼の手は、力強くあたしを彼の方へ向かせた。


『…』

あたしは俯き何も言わなかった。

『…無視するなや。これやるから』


?…


それは、彼の隣にあったタオルだった。

『これ…』


『俺の』


人のを借りるわけにはいかない。

『いや…大丈夫です。…気持ちだけ受け取っときます』


『………お前さ…こうやったら…』

そういってあたしの前髪をあげると、彼の服についていたピンで前髪をとめた。

『いいじゃん』


"いいじゃん"

といったその笑顔が可愛かった。


『…でも…』


あたし今髪真っ白だから…ピンが汚れる…


『気にすんな。それやるから』

『えっ!いやそんな悪いです』

慌ててピンを取ろうとした…
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