ママの手料理
隠れんぼが始まった当初、カーテンの裏に隠れていた彼の頭にはべっとりと血がついていた。


彼も、既に息をしていなかった。


俯いているからその表情は分からないし怖いから見たくないけれど、彼の両手は何かに耐えていたかの様に固く握られていた。



此処で、一体何があったのだろう。


私はしゃがみ込んでそっと彼の握られた片手を触り、その冷たさに自分の手が慣れたところで、ぎゅっとその手を握り締めた。



そして、数秒間その体勢でいた私が、ふっと顔を上げた時。


「い、……いやあああああっっ!?ぎゃああああっ!」


ベランダの外に居る誰かと、目が合った。


(無理無理無理何何何何誰誰誰……)


信じられない程の恐怖で心臓の鼓動が恐ろしい程早くなり、私は思わず握っていたユウトの手を引っ張って自分の方へ寄せた。


その途端、ユウトは壁を伝う様にして床に倒れた。


「ぎゃあ!?」


自分のせいなのにそれに酷く怯えてまた叫んでしまった私は、そこで気がついた。


(あれ、ベランダの所に居る人って、ハズキじゃない…?)


笑う膝に何とか力を入れて立ち上がった私は、震える手でベランダに続く窓を開けた。
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