ママの手料理
私の今の心情全てを代弁したかの様な彼の言葉に、目頭が一気に熱くなる。


『溜めないで下さい。壊れる前に、僕らに何でも言ってください』


こんなに初対面の人に優しくされたのは久しぶりだ。


彼には、例の火事の日に私に向かって駆け寄ってきてくれたあのおじさんや丸谷家の皆と同じくらいの温かさがあって。


「独りが嫌とか、怖いとか、夜寝れないとか……。ほぼ全員そういうの経験済みなので分かってくれます。大丈夫です。…紫苑さんは、独りじゃありません」


その優しさに甘えたいけれど、もう誰も失いたくなくて。


今口を開いたり瞬きをしたら、涙が溢れ出しそうで。


唇を噛んで黙っていると、


「僕らは、紫苑さんが本当の家族を見つけられるまで何処にも行きません。居なくなりません。…大丈夫です、本当に大丈夫ですから」


航海は、震える私の手にまた自身の手を重ねた。


「………っ、!」


その瞬間、抑えていた涙が我先にと外界に流れ出す。


怖かったんですよね?何もしないので此処で一緒に寝ますか?僕は床で寝るので、と、彼は安堵のあまり泣きじゃくる私に優しい口調で提案してくれて。


さすがに航海を床で寝かせるわけにいかないと分かっていても、


「……うん、」


簡単に折れてしまうのが私だった。
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