ママの手料理
見事勝利した伊織はにへらと笑い、


「おはよう〜、皆揃ったから朝ごはん食べよ!」


と、いつもの如く明るく呼びかけた。



「…シロップ」


「ほらよ」


「…バターどこにある?」


「こちらになります」


昨日あんな事があったにも関わらず、皆の食事風景はいつもと変わらずに至って普通だった。


パンケーキを食パンかなにかだと勘違いしているのか、フォークやナイフも使わずにそれをそのまま口に突っ込むという新スタイルで食事をしている琥珀に、吹き出しそうになる。


その直後、


「やっぱり女子が作る料理って美味しいわ〜、いつもいつもありがとうね」


と、まだ口の中にものを入れながら感謝の言葉を述べてくれる大也に対し、私は、うん、と頷いた。


昨日の事は誰も何も言わず、今までと同じようにゆっくりと時が過ぎていく。


続きは明日ね、と言った湊さんまでも、にこやかに笑いながらヨーグルトをパンケーキに乗せていた。


(んー、これは私が切り出すべき、?)


今日8時前に皆が集まったのは、昨日の話の続きをする為だ。


少々急かす形になるかもしれないけれど、そんなものは関係ない。


そして口の中にあるパンケーキを飲み込んだ私が、いざ口を開こうとしたその時。


「ねえー、昨日の夜何があったの?壱のせいで途中から全然覚えてないんだけど、誰か教えてくれるかな?」
< 196 / 367 >

この作品をシェア

pagetop