ママの手料理
その目は真っ黒で、何も捉えていない。


いや、違う。


「忘れてました、今はモノクロの世界なんでした」


彼の烏のような瞳の奥には、ロボットの様にぎこちない笑みを浮かべた、気味の悪い少年の姿があって。


彼の目に映る自分と目を合わせた瞬間、航海の中で何かが音を立てて弾けた。


「イブクイックだか何だか知りませんが、発砲するなんてずるいですよ殺します」


今度は逃がさない。


「違う、イプシロン」


蹴りを繰り出すがかわされる。


「今日はクリスマスイブですよ」


それでも、相手の拳をいとも簡単に受け止めてしまった航海は、有り得ない程の怪力でイプシロンの手首を捻った。


「違う、イプシロン」


それでも、彼は全く表情を変えない。


「…うるさいですね、黙ってて貰えますか」


空いている方の手で彼の首を掴み、彼の身体を持ち上げながら首を絞め始めた航海は、彼の手から滑り落ちた銃を手に取ってにんまりと口を開けた。


「これで静かになれますね」


物凄い力で抵抗するイプシロンをものともせず、怒り心頭の航海は彼の口に銃を突っ込み。


バァン………


三度、発砲した。
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