ママの手料理
「真っ赤っ赤ー!ふふふ殺す」


サイコパスの様ににたりと笑って一瞬で相手の真横に立った彼は、躊躇せず敵の首を有り得ない方向に捻じ曲げた。


「あぎゃ、……」


瞬間、情けない声を出して膝から崩れ落ちる敵と、


「イプシロンを返せええぇ!」


先程航海が殺した敵の名前を叫びながら、猛烈な勢いで向かってくる何人もの新たなOASISに向かって、


「死んだ人はもう戻ってきませんよ」


わざとらしく哀れんだ目をしたサイコパスは、片方の頬を引き上げた。


「なので、皆さんをイプシロンさんの所に逝かせてあげますね」


壱と対峙していた男も、今まで琥珀が踏みつけていた男も、全員が獣のような目をしながら返り血を浴びた高校生に飛びかかる。


(イプシロン…ギリシャ語か?)


「おい、イプシロンってOASISの幹部の1人じゃね…?」


すっかり手持ち無沙汰になってしまった壱が、何となく自分の考えを声に出すと。


「…ああ、そうかもしれないです……ここらの雑魚よりは遥かに強かったので。…まあ、僕の方が上でしたけどね!」


(そりゃあ、お前が覚醒したからなぁ)


そう言いながら目を見開いて笑う彼の顔は思わず目を背けたくなるほど不気味で、まるでホラー映画に出てきそうだ。
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