ママの手料理
そう大声で言いながら、ガンマが自身のスマートフォンの画面を見せてきた。


(え、……)


涙で濡れた目を瞬かせてその文を読む。


『ここはOASISの本部。
mirageは下の階にいる。
俺はお前を殺さない。』


(え、!?)


衝撃的な三文に、私の思考は軽く停止した。


(ここにmirageがいるの!?…私、助かるの!?)


黙ってしまった私に、耳を澄ませて、と、ガンマが囁いた。


そして、言われた通りに耳を澄ませてみると。


ドンッ…バンッ……


「…琥珀の…って言っ…じゃ…馬鹿ああぁっ!」


ドタバタとした音が聞こえた直後、明らかに大也のものだと思われる叫び声が微かに聞こえてきた。


(大也っ………)


聞こえる、聞こえるよ。


階下で、荒川次郎を殺して絵画を盗むという目的を遂行する為に闘っている彼らの声が。


今まで気づかなかったのは、ガンマがうるさかったのと私の精神状態がそれどころではなかったからだ。


皆が同じ空間にいる、私は1人ではなかった。


死にたいなんて嘘、皆が居るからまだ生きていないといけない。


皆で生きて帰って笑顔でクリスマスを過ごすんだ、そうやってサンタさんにも約束したんだから。


『迷惑なんかじゃないです』


それに加えていつだったかの航海の優しい声を思い出して、もう嗚咽が止まらない。
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