ママの手料理
急にお母さんのカウントダウンが始まり、それに反応した幼い兄妹達はキャーキャー言いながら隠れ場所を探し始めた。


「お父さん……」


従来のものとは違う雰囲気を持つ今回の隠れんぼ。


私は、隠れようと奮闘する子供達をいつにも増して愛おしげに眺める彼を不安げに見つめた。


「ほら、紫苑も隠れて。勉強のストレスは、こういう所で発散しないとね」


不意にこちらを向いたお父さんの目が潤んでいた気がして、


(お父さん、歳のせいで感情豊かになってるの…?)


少し疑問に思って、変に突っ込みを入れながら、


「うん…、ありがと」


私は素直に頷いて、他の兄妹達が何処に隠れたかを見ながら、お母さんのクローゼットの中に隠れた。


数を数えていたお母さんが涙を零していた事に、これまた疑問を覚えながら。



やっと兄妹達が隠れ終わり、静まり返った家の中。


ただ聞こえるのはお母さんの数を数える声と、お父さんの、


「皆凄いね、何処に居るのか本当に分からないよ」


という、わざとらしい声のみ。


(馬鹿馬鹿しいな…。早く探しに来ないかな)


そう考えながら、光の届かないクローゼットの中で自分の髪をいじっていると。




「おっ邪魔しまーす!」


「この家の鍵とチェーンロック、あるだけ無駄っすね!意味ないし!そもそも掛かってた?」


「うひひひ僕の可愛い可愛いママンとパパンは何処ぉー?」
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