ママの手料理
そう尋ねると、彼は、


「ああ、それに関しては弁護士さんと相談してチャラにしてもらったよ!2兆なんて払える額じゃないし、また狙われるといけないからね!」


と、お得意のにっこりスマイルで返事をしてくれた。



「あ、そういえば…大也はどこですか?」


湊さんからの説明を受けている最中、私はふと気になった事を口に出した。


この大部屋にはベッドが8つあるけれど、そのうち私たちが使っているのは7つ。


そして、目を覚ましてから数時間経つけれど、私は大也の姿だけを見ていなかった。


それを口に出すと、湊さんは悲しそうに微笑み。


「紫苑の体調が落ち着いたら、大也の所に行こうか」


そう提案してくれた。


私が“大也”と言った瞬間、場の雰囲気が一気に重くなったのを感じながら、私は、はい、と頷いた。




3日後。


病院食も食べれるようになり、病院内も歩き回れ、mirageともたまにお見舞いに来る中森さんや笑美さんとも元気に話せるくらい回復した私は、湊さんと琥珀に連れられて病院内を歩いていた。


向かう場所はもちろん、大也のところだ。


「大也、元気かなぁー」


この時はまだ何も知らない私が無邪気にそう言うと、


「…ああ、あいつは大丈夫だ」


琥珀が、まるで自分に言い聞かせるかのように答えた。
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