ママの手料理
“誰なの”と思っておきながら、その答えは分かっていた。


月光に照らされたから分かる明るい色の服に、うつ伏せになっているから確認出来るポニーテール。


彼女は隠れんぼで確か畳まれた布団の下に潜っていた、まだ7才の私の妹。


「っ…、モモ、何やってるの……?」


いつの間にか暖房が消されて凍りついた部屋。


クローゼットからゆっくり足を下ろした私は、モモの身体に恐る恐る触れて。


「いやあっ!」


その氷の様な冷たさに、そこから言葉通り飛び上がって叫んだ。


私の裸足の足に床の固まった血がつき、モモに触れた手には彼女の顔や髪についた血がついた。



彼女は、死んでいた。



それでも、今の私にはそれを怖がったり泣いたりする余裕も無くて。


何故なら。


(…あれ、誰……?)


部屋の端、カーテンの横に座り込んでいる男の子の存在に気が付いたからだ。


「…ユウト?ユウトでしょ、…?」


私が何を言おうとも、誰からも返答が来ないこの空間。


それでも、私は星柄のパーカーを羽織った8才の弟の名を呼びながら、彼の方に近づいて行った。
< 9 / 367 >

この作品をシェア

pagetop