ママの手料理
「ある時湊さんが、『もしかしたら航海は家族っていう存在じゃなくて、1つの家族っていう形を嫌いになったのかもしれないよ。航海が安心出来る様な家族の形はあるはずだから、それが見つかるまでは此処でゆっくりしていきな』って言ってくれて…」


一気にそこまで話した彼は、欠伸を噛み殺しながら遠い目をした。


(そんな嬉しい事を言ってくれるなんて、)


「湊さん、いい人だね」


私がそう言うと彼は、はい!、と大きく頷いた。


「それで僕は納得して、僕が好きになれる家族の形が見つかるまでは此処で暮らしてていいんだなって思って、初めて自分の居場所が見つかった気がしたんです。……それで最終的に、僕にとっての家族はこの人達だなって気付きました」


「…そっか、」


それは紛れもなく航海にとっては嬉しい事だけれど、それと同じ状況が私にも起こるとは限らない。


抑揚の無い声で相槌を打った私に気づいた彼は、慌てて、


「急に自分のこんな変な話をしてしまってすみません。………でも、だから、紫苑さんも」


と、謝りながらも言葉を続けた。


「…今は急に家族だなんだって言われて困ってるかもしれないし、男ばかりに囲まれて自分の居場所が分からなくて凄く辛い時期だと思うんですけど、でも、今の僕らは紫苑さんの家族なので。…なので、溜めないで下さい。壊れる前に、僕らに何でも言ってください」
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