キミに、愛と思いやりを
その後、彼はあたしの制服を見つめ始めた。彼もきっと、あたしと同じ学校に通っていることに気づいたのだろう。
「お、同じ学校……みたいだねっ」
「そうだね」
彼は爽やかな笑顔で、数度頷きながら言ってくれた。
「あたし……小園 花蓮。3年生なの」
「僕、仙谷 歩(せんごく あゆむ)。3年生ってことは、同学年だね」
仙谷、歩くん。
仙谷くん。すごくかっこいい苗字だな。あたしが知る限り、そんなかっこいい苗字の人は、周りにはいない。
「ここの花屋さん、よく来てるの?」
「僕? 結構来るよ」
あたしも、ここの花屋さんには結構来ている。それだというのに、彼の存在に全く気づかなかったのか。
いや、たまたま行く時間が異なってばかりだったんだろう。
「あたしも……。なんか、花とか種とか見てるだけでも楽しいんだよね」
「そっか」
笑顔を崩すことなく、頷いた彼は本当に優しそうに見えた。