キミに、愛と思いやりを

授業を終えて、下校しようと思うとまだ粉雪は降っていた。
黄緑色だった芝生の上には、雪が積もって白くなっている。


歩が通っている高校を通って帰ろうとすると
校門で、歩が出てくるのが見えた。



「あ、歩ー!」



「花蓮!」



あたしの声に反応して、歩は顔をほころばせた。



「明日さー、またデート行く?」



「うん! どこにしよっか」



「どこでもいいよ……。あっ、こないだ行ったパンケーキカフェで、食事系のパンケーキを頼んで昼ご飯食べる?」



確かに、あそこで甘くないパンケーキもメニューの裏表紙にもあったな。


……実を言うとあたし、食事系パンケーキを人生で一度も頼んだことがない。興味を持つことがあっても、時間だったり、頼む勇気がなかったりするだけで全然頼めていなかった。


でも、歩と食事系パンケーキを食べにいくとなると、もう頼まなざるを得ないよね。



「あー、それもいいなあ!」



「ん? あそこにいるのは……宇野?」



いきなり、目を丸くして歩は真正面を見た。
そこには確かに、宇野くんの姿が見えた。



「ほんとだ、宇野くんだ!」



「小園さん、仙谷!」



あたし達に気がついて、宇野くんは手を振ってきた。



「元気そうじゃん」



「まぁな。小園さん達がいた頃はにぎやかだったから、最初は寂しそうにしているあいつらも、少しすればいつものように母ちゃんにべったりだぜ?」



晴翔くんも来翔くんも、元気そうなんだ。
よかった。




< 138 / 167 >

この作品をシェア

pagetop