キミに、愛と思いやりを

明くんは、とうとう意識を取り戻せなかった。
仕方なく、病院も閉店ということで今日は帰ることにした。



「俺、父親を事故で亡くしてるんだよ」



「そうなの!?」



「それも、高齢者の車運転でな。その車にはねられて死んだんだ」



「そう、だったんだ……」



あたしったら、お父さんは病気だったのかと勝手に思っていた。



「小園さんが俺の家庭をどんなふうに見えるかわからないけどさ、一応家族仲は良くてさ。一緒にスポーツもやってくれたし、母ちゃんと俺のために頑張って仕事をしてくれた。母ちゃんも本当に父ちゃんに対して愛はあったんだってさ」



「あたし、宇野くんが家族と仲悪そうになんて見えないよ。お母さん、とってもみんなのこと思っていそうだったし」



あれだって、家族仲が良かったからなんだよね。



「そっか。でも、あいつらには何もないんだよな。父ちゃんとの思い出なんか」



そうか、宇野くんは弟さん達と結構歳が離れてるもんね。
そう考えたら晴翔くんと来翔くんは、まだ生まれてるか生まれてないかくらいだ。



「だから、宇野くんはあの子たちのお父さんみたいな感じなんだね」



「別に、俺はそうは思わないよ。どんなに父親のように慕ってくれたって、本当の父ちゃんは帰ってこないし、俺は父ちゃんのような感じはないし」



宇野くんは切ない目をしながらも、口角は少し上がっていた。



「でも、あたし、本当にすごいと思ってる。あたしと同い年で、ちっちゃい子の面倒をちゃんと見られてるだなんて」



「けどさ、小園さんだって同じじゃんか。小園さんは花をいつも大切にしてるんだろ?」



「お母さんがガーデニング好きで、それで影響されてるだけだよ」



そう、あたしは本当にお母さんから影響を受けているだけで家庭がすごく大変とかそういう感じのはない。

だから、家の都合で家族のために必死に頑張っている自分と同い年の人って本当にすごいと思っちゃう。




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