キミに、愛と思いやりを

翌日、あたしは歩や宇野くん達と一緒にまた病院へ行った。



「高杉 明くんのことなのですが」



看護婦さんによると、今日の朝に明くんは人生の幕を独りで閉じたらしい。


ベッドを見ると、その上で横たわっている明くんは確かにピクリとも動いていなかった。


もう開くことが永遠にない、目と口。



「明くん、そんな……」



「明……」



宇野くんは、明くんにさらに近づいた。



「クソ……なんで、なんで……。なんでこんなことになったんだよ……」



涙声で、そう言い続ける。



「明……」



翼くん達も絶望としていた。
それでも、呼びかけに反応するんじゃないかとまだ明くんの名前を呼んでいて、相変わらず宇野くんはぶつぶつ言っている。


みんな、鼻をすすって泣いた。


あたしも、声を上げて泣き出した。
隣で、歩も一緒に鼻をすする音が聞こえた。


長いこと、誰も会話することなくただただ、宇野くんの小声でぶつぶつ言う声、歩の鼻をすする音、そしてあたしの泣き声だけが響いていた。




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