キミに、愛と思いやりを

「あれ、小園さんと仙谷?」



宇野くんは、あたし達の姿を見て目を丸くした。



「宇野くん……」



「兄ちゃんに会いにきたんじゃない?」



晴翔くんがそう言うと、宇野くんは口を結んで俯いた。

ここは、引き返しておいた方が良さそうだ。



「あの、ごめんね!? 勝手に来ちゃって。大丈夫、すぐ帰るから!」



あたしは歩の手を掴んで、来た道を引き返そうとした。



「いや、いいよ。……っていうか、待って」



背中の方で聞こえた声で思わず、足を止めて歩の手を掴む自分の手も緩めた。



「俺、2人と話したい……。予定があるっていうなら、とめないけど」



「あたしは予定ないから大丈夫だけど、歩は平気?」



「僕もない」



「あんた達、そこで何してんの?」



宇野くんの、お母さんの声だ。
前に会った時よりも、だいぶ元気そうな声をしていた声質は全く一緒だった。




< 146 / 167 >

この作品をシェア

pagetop