キミに、愛と思いやりを
父さんが帰ってきて、我が家はクリスマスパーティーを始めた。
「メリークリスマス!」
僕は、父さんと母さんと一緒にシャンパンが注がれたグラスをカチンと合わせる。
グラスの中のシャンパンは、激しく踊った。
「今年のクリスマスも綺麗だね」
母さんが焼いてくれたミートパイを頬張りながら、僕は周りを見回した。
リースはもちろん、クリスマスローズやポインセチアが可愛らしくアレンジされて飾られている。
「そりゃあ、母さんに任せればこうなるぞ」
父さんに言われて、母さんは嬉しそうに笑った。
母さんは、フラワーコーディネーターで誕生日会やクリスマスパーティーといった感じの特別な日にはいつも花で家を綺麗に彩ってくれる。
父さんが頼んでくれたチョコケーキの上にも、バラの砂糖菓子がある。
濃厚なチョコクリームの甘くてほろ苦い味が、口の中で広がった。
「……ん? あっ、歩! 時計!」
「え? ああっ」
「どうかしたか?」
サラダを口に入れながら、父さんは瞬きをする。
「歩はこれから、行かなきゃいけない場所があるのよねぇ。さあ、はやく行きなさい!」
僕は、すぐそばにあったコートを着て外へ出た。