キミに、愛と思いやりを

待ち合わせ場所の方へ行くと、花蓮が走ってくるのが見えた。
なぜか、待ち合わせ場所には誰もいない。



「花蓮!」



紙袋を持った僕は、片手を振りながら走る。



「歩! どうしたの? 急に」



花蓮を呼んだのは、結構急でメールにも目的を打たなかったため、何が何だか彼女が分からないのも当然だ。



「これを渡したかったからなんだ。メリークリスマス」



僕は、花蓮に紙袋を渡す。


花蓮が手を突っ込み、紙袋から出てきたのは、メッセージカードがぶら下がった、赤いリボンで結ばれた袋。



「これ、プレゼントだよ」



花蓮が袋から出したのは、あの時の花鳥園にいた白いフクロウとそっくりの、ふわふわのぬいぐるみ。



「花鳥園の花蓮、可愛かった」



僕はスマホを操作して、画面にあの時の白いフクロウと花蓮が写った写真を表示した。


あの時のびっくりしている花蓮の顔を自分で見ておかしくなったのか、彼女は口元を片手で押さえてクスクスと笑った。



「この写真思い出してたらさ、急にそのぬいぐるみが見えて。だから、それにしちゃった。嫌だった?」



僕が聞くと、花蓮はフクロウのぬいぐるみを抱きしめて、



「ううん、ありがとう」



と、にっこり笑った。




< 153 / 167 >

この作品をシェア

pagetop