キミに、愛と思いやりを
私は、袋の中からクロワッサンを3枚取り出してオーブンに入れた後、フライパンの上で卵を割った。
「あー、おなか、すいちゃった」
さっきのことが嘘のように、食卓でぐったりする愛香。
「朝からあんなに走り回るからよー」
苦笑いをしながら、フライパンの卵を箸でほぐす。
「子供らしくていいじゃない」
朝食を待ちながら、携帯を見ている歩がそう言った。
「でも、あんな大声じゃ近所の人に申し訳ないわ。愛香、これからは朝早くに騒いじゃダメよ」
「はーい!」
返事はいいけれど、果たして本当にできるのだろうか。
まあでも、大人しすぎるよりも多少元気の方がいいかもしれないんだけどね。
ちらりと目をやると、愛香の隣の椅子では白いフクロウのぬいぐるみが落ちかけている。
「あっ、フクロウさんが!」
愛香が気がついて、ぬいぐるみを座り直させた。
そのぬいぐるみは、愛香が赤ちゃんだった頃に座っていた椅子にいつも乗っている。
愛香は赤ちゃんの頃から、その白いフクロウのぬいぐるみを大事にしているけれど、私達が結婚する前からあるものなので少し系がほつれてる部分がある。
それでも愛香も歩も私も、そのフクロウのぬいぐるみが大切なので捨てることなんてできない。
私は、焼きたてのクロワッサンとスクランブルエッグが乗ったお皿を置いた。