キミに、愛と思いやりを
夜になり、リビングでテレビを見ているとお父さんが帰ってくる音がした。
「花蓮、緑子! ただいま!」
「おかえり、お父さん!」
「おかえりなさい」
リビングに入ってきて、お父さんは、
「お、花蓮。高校生の制服を着た姿、父さんにも見せてくれよ」
と言った。
もう普段着になっているというのに、もう一度制服に着替えないといけないのか。
「えー。こっちの方が動きやすいんだけどなー」
「花蓮! そう言ってる割に、顔の方では笑ってるわよ」
洗い物をしている、お母さんが突っ込んだ。
「分かったよ。今、着替えてくるね」
あたしは、また制服に着替えて、リビングに戻った。
「こんな感じになるよ。どう?」
言いながら制服姿を見せたあたしを見ると、お父さんが大きく目を見開いた。
「お、可愛いじゃないか。セーラー服も似合うけど、ブレザーも完璧に着こなせるんだな!」
「お父さん、やめて。あたし、もう着替え直すからね」
「ちょ、ちょっと待てよ、花蓮。写真撮ってから」
部屋に行こうとしたあたしを見て、お父さんはいそいそとカバンからスマホを取り出した。
「写真まで撮るの?」
「当たり前だろ? 可愛い一人娘が、無事高校生になれたんだから、制服姿はバッチリ撮らないとだろ」
お父さんは、スマホであたしを写した。
「よし、バッチリだ! ありがとな、花蓮」
「うん、どういたしまして!」
あたしは、また部屋着に着替え直しに自分の部屋へと行った。