キミに、愛と思いやりを

1週間後の放課後。
高校にだいぶ慣れてきたあたしは、仙谷くんが通う学校を一目見て見ることにした。


あたしが通う学校と彼が通う高校は、そこまで遠くない。


家とは違う方向へ、あたしは進んだ。


あそこ……。
仙谷くんが通っている高校だ。


黒いブレザーを着た仙谷くんが、ちょうど校舎を出たところだったので、あたしは胸がドキッとした。



「仙谷くーん!」



黄色い声がして、仙谷くんの後ろから活発そうな女の子が走っている。



「今日、仙谷くんと帰りたいな!」



「いいよ」



仙谷くん、制服が変わっただけで変わっていないな。花が咲くような、きれいな笑顔のままだ。


女の子達にもモテる訳だな。



「仙谷くんって、どこの中学に行ってたの?」



「僕は、緑園(りょくえん)中学校に行ってたんだよ。皆は?」



緑園中学校。
ちょっとだけ懐かしい響き。



「へぇ、そうなんだー! わたし達はね……」



女の子達は、可愛いソプラノの声をあげていて、本当に楽しそうだ。そのうち1人が、あたしのことを見たので、思わず目を逸らして家の方へ走り去った。




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